オルガネラと細胞骨格
ミトコンドリア
ミトコンドリアは真核細胞の容積の約10%に相当し、多くの細胞機能や機能不全において重要な役割を果たしています1,2。Invitrogenでは生細胞や固定細胞内のミトコンドリアの膜電位をモニターし、ミトコンドリアを染色するための色素を提供しています。製品の励起・放出波長は広い範囲にわたっていますので、実験にもっとも適した色素を見つけることができます。
下記の選択ガイドに当社のミトコンドリアプローブの基本的な特徴を示しました。個々の製品と製品ラインの詳細は選択ガイドに続くセクションをご覧ください。
インビトロジェンのミトコンドリア色素
| 製品 | 励起/蛍光* | 生細胞を染色 | ミトコンドリア膜電位-依存性蓄積を示す | 固定†および透過処理後‡も保持 | Cat.No. |
* およその励起(Ex)および蛍光(Em)最大(nm)。 †4%ホルムアルデヒドで固定する。十分に染色するためには多くの色素が必要; 固定細胞を染色するとサンプル中のノイズが増加する。
‡ Triton® X-100を用いて透過させる。§複数の蛍光ピークを示す。
** MitoTracker® Deep Red 633色素の放射する蛍光は肉眼では見えないが、多くの画像処理システムを用いて容易に検出可能。
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| MitoTracker Green FM | 490/516 (緑色) | ○ |
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| M7514 |
| Nonyl Acridine Orange | 495/519 (緑色) | ○ |
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| A1372 |
| Rhodamine 123 | 507/529 (緑黄色) | ○ | ○ |
| R302, R22420 |
| Dihydrorhodamine 123 | 507/529 (緑黄色) | ○ | ○ |
| D23806 |
| JC-1 | 514/529, 590§ (緑色/赤色) | ○ | ○ |
| T3168 |
| TMR、メチルエステル | 549/573 (橙色) | ○ | ○ |
| T668 |
| TMR、エチルエステル | 549/574 (橙色) | ○ | ○ |
| T669 |
| MitoTracker Orange CMTMRos | 554/576 (橙色) | ○ | ○ | ○ | M7510 |
| MitoTracker Orange CM-H2TMRos | 554/576 (橙色) | ○ | ○ | ○ | M7511 |
| MitoTracker Red CMXRos | 579/599 (赤色) | ○ | ○ | ○ | M7512 |
| MitoTracker Red CM-H2XRos | 579/599 (赤色) | ○ | ○ | ○ | M7513 |
| MitoTracker Red 580 | 588/644 (赤色) | ○ |
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| M22425 |
| MitoTracker Deep Red 633 | 644/655 (**) | ○ |
| ○ | M22426 |
ミトコンドリア色素ー膜電位感受性
ミトコンドリア呼吸経路では、複雑な電子伝達系を介してミトコンドリアのマトリックスから膜内の空間にプロトンが活発に押し出されることにより、電気化学勾配が形成されています。この勾配は還元ピリジンヌクレオチドが酸化されてプロトンが押し出され、電子が伝達系に伝えられて形成されています。ATPは複合体V(F0F1、ATP合成酵素)が酸化的リン酸化(OxPhos)として知られるNADH/FADH2酸化とADPのリン酸化を組み合わせることで生成されます。この内部ミトコンドリア膜電位が活発に呼吸しているミトコンドリアに色素を引きつけます3,4。
ミトコンドリア内部での陽イオン性色素JC-1の蓄積は膜電位に依存しています。ミトコンドリア膜電位が低いと色素はほとんど蓄積しません。低い濃度では色素はモノマーとして存在し、緑色の蛍光を放出します。ミトコンドリアの膜電位が高いと色素は非常に多く蓄積され、このような高濃度では色素は”J-会合体”を形成し、蛍光が緑色から赤色にシフトします。こうして、このシアニン色素の蛍光をミトコンドリア膜電位の敏感な指標として利用できるのです。緑色蛍光JC-1モノマーのシグナル(水中での最大吸収/放出は?510/527 nm)と、485 nmと最大吸収585 nmの間で効率的に励起されるJ-会合体(蛍光最大590 nm)を組み合わせることで、さまざまなレシオメトリック(比率測定)分析が可能です。赤色/緑色JC-1蛍光の比は膜電位に依存しており、ミトコンドリアの大きさや形状、密度とは独立しています5-7。
JC-1をロードした培養ヒト前脂肪細胞。細胞をミトコンドリア膜電位脱共役剤のFCCPで処理した。緑色の蛍光はJC-1モノマー、橙色の蛍光はJ-会合体によって放出されている。図はBob Terry氏(デンマーク、BioImage A/S)からの提供。
ローダミン123は細胞透過性の陽イオン蛍光色素で、細胞毒性を引き起こすことなく活発なミトコンドリアによって容易に取り込まれます8。取り込みや平衡に30分以上要するDASPMIなどの色素と比較して、ローダミン123の取り込みと平衡は速やかに起こります(数分)9。フルオレセイン・ロングパスオプティカルフィルターを通してローダミン123によって染色された細胞のミトコンドリアの蛍光を見ると黄緑色に見えます。しかし、テトラメチルローダミン・ロングパスオプティカルフィルターを通して見ると赤色に見えます。脂質親和性のローダミンやカルボシアニン色素とは異なり、ローダミン123は小胞体を染色しません。
HL60細胞におけるミトコンドリア膜電位の二変数JC-1分析。図BおよびDでは細胞をK+/バリノマイシンで脱分極させた。図Cはスタウロスポリンによるアポトーシス後のミトコンドリア脱分極の変動を示す。図はModena and Reggio Emilia大学のAndrea Cossarizza氏からの提供。
テトラメチルローダミンのメチルエステルとエチルエステル(それぞれTMRM、TMRE)は細胞質Ca2+トランジェントに関連したミトコンドリア脱分極の測定10や、時間依存性ミトコンドリア膜電位の視覚化11に有用です。橙色の蛍光を発するTMRMおよびTMREは多色実験での緑色蛍光色素と互換性があります。
ローダミン123やテトラメチルローダミンなどの従来のミトコンドリア蛍光色素は活動するミトコンドリアによって容易に取り込まれますが、ミトコンドリアの膜電位が失われると細胞からウォッシュアウトされます。このため、ミトコンドリアの活動状態を左右するアルデヒド、その他の固定液で細胞を処理しなければならない実験での利用が制限されてきました。この制限を克服するため、InvitrogenはMitoTrackerR OrangeおよびMitoTrackerR Redプローブを開発しました。これらの色素は膜電位依存的にミトコンドリアに蓄積され、免疫細胞化学、in situハイブリダイゼーション、電子顕微鏡などの処理ステップを行ってもその場所に留まります。さらに、MitoTracker® OrangeとMitoTracker® Red試薬はミトコンドリアを染色するとそれを分析する前に細胞を固定液で処理できるので、病原性細胞を扱う際に伴う困難のいくつかも回避することができます。
MitoTracker® Red CMXRosとともにインキュベートしたウシ肺内皮細胞。細胞を固定して浸透処理し、SYTOR 16緑色蛍光核酸色素で対比染色した。微小管をマウスモノクローナル抗α-チューブリン抗体で標識して青色蛍光Alexa Fluor® 350ヤギ抗マウスIgGで視覚化し、適切なフィルターを用いて撮影した。
ミトコンドリア色素ー膜電位非感受性
MitoTracker® Green FMとMitoTracker® Red 580色素は固定細胞や生細胞でのミトコンドリアの染色に有用です(染色は膜電位感受性ではありません)が、固定や浸透処理後に染色パターンが保持されません。MitoTracker® Deep Red 633を用いたミトコンドリア染色も膜電位非感受性ですが、この色素による染色パターンは固定や浸透処理後も保持されます。
ノニルアクリジンオレンジは最長10日間にわたってHeLa生細胞のミトコンドリアに保持されるので、分離中や細胞融合後のミトコンドリアの追跡に有用なプローブです12-14。ノニルアクリジンオレンジの取り込みはミトコンドリアの膜電位に依存せず、ミトコンドリアのフローサイトメトリー分析において有用なツールであることが証明されています15。
酸化的リン酸化反応系のタンパク質に対する抗体
Invitrogenでは酸化的リン酸化に関与する複合体(OxPhos)に対するユニークで広範な抗体を提供しています。これらのミトコンドリア抗体製品に関する詳細はこの冊子の「ミトコンドリア機能不全」のセクションをご覧ください。ミトコンドリアOxPhosタンパク質とヒトの重要な疾患との関連性に関する詳細はレファレンスAをご覧ください。
MitoTracker® Green FMでプレラベルし、ウシ卵母細胞のin vitro受精に用いられる牡牛の精子。受精後の卵は浸透処理し、抗チューブリン抗体、ついでTAMRA-標識二次抗体で標識してDAPIで対比染色した。画像はウィスコンシン大学のPeter Sutovsky氏からの提供16。
その他のミトコンドリアタンパク質に対する抗体
当社の抗ミトコンドリアポーリンと抗ピルビン酸デヒドロゲナーゼ抗体はこの冊子の「ミトコンドリア機能不全-その他のミトコンドリアタンパク質に対する抗体」のセクションをご覧ください。
ミトコンドリア(MitoTracker® Red 580)、ゴルジ体(BODIPY® FLセラミド、緑色蛍光)および核(ヘキスト33342、青色蛍光)のプローブで標識した3T3生細胞。画像はHuygensソフトウェア(Scientific Volume Imaging)を用いてデコンボリューションさせた。
- 参考文献:
- 1. Mitochondrion 1, 3 (2001); 2. Trends Biochem Sci 25, 319 (2000); 3. Cytometry 36, 359 (1999); 4. Ann N Y Acad Sci 893, 391 (1999); 5. Fluorescent and Luminescent Probes for Biological Activity, Mason WT, Ed. pp. 124?132 (1993); 6. Biochemistry 30, 4480 (1991); 7. Proc Natl Acad Sci U S A 88, 3671 (1991); 8. Proc Natl Acad Sci U S A 77, 990 (1980); 9. Int Rev Cytol 122, 1 (1990); 10. Proc Natl Acad Sci U S A 91, 12579 (1994); 11. Biophys J 65, 2396 (1993); 12. Histochemistry 82, 51 (1985); 13. Histochemistry 80, 385 (1984); 14. Histochemistry 79, 443 (1983); 15. Basic Appl Histochem 33, 71 (1989); 16. Biol Reprod 55, 1195 (1996).
製品:
| Cat.No. | 製品名 | サイズ |
| A1372 | acridine orange 10-nonyl bromide (nonyl acridine orange) | 100 mg |
| D23806 | dihydrorhodamine 123 *5 mM stabilized solution in DMSO* | 1 mL |
| M22425 | MitoTracker® Red 580 *special packaging* | 20 x 50 μg |
| M22426 | Mito® Deep Red 633 *special packaging* | 20 x 50 μg |
| M7510 | Mito® Orange CMTMRos *special packaging* | 20 x 50 μg |
| M7511 | Mito® Orange CM-H2TMRos *special packaging* | 20 x 50 μg |
| M7512 | Mito® Red CMXRos *special packaging* | 20 x 50 μg |
| M7513 | Mito® Red CM-H2XRos *special packaging* | 20 x 50 μg |
| M7514 | Mito® Green FM *special packaging* | 20 x 50 μg |
| R22420 | rhodamine 123 *FluoroPureTM grade* | 25 mg |
| R302 | rhodamine 123 | 25 mg |
| T3168 | 5,5',6,6'-tetrachloro-1,1',3,3'-tetraethylbenzimidazolylcarbocyanine iodide (JC-1; CBIC2(3)) | 5 mg |
| T668 | tetramethylrhodamine, methyl ester, perchlorate (TMRM) | 25 mg |
| T669 | tetramethylrhodamine, ethyl ester, perchlorate (TMRE) | 25 mg |
| Y7530 | Yeast Mitochondrial Stain Sampler Kit | 1 kit |